1. HOME
  2. ブログ
  3. SURGEON
  4. Journal Picks
  5. 大胆な外科医症候群

大胆な外科医症候群

おもしろい論文をみつけた.
The Bold Surgeon Syndrome 「大胆な外科医症候群」と題するヤツだ.

カンタンにサマリーをいれとく.


心理学、外科研修、倫理、患者安全に関する科学的エビデンスを統合した分析的レビューを実施した。PubMedおよびScopusから、過信、ダニング=クルーガー、外科的学習曲線、メンターシップ、形成外科におけるソーシャルメディアなどの用語を用いて、2000年から2025年までに発表された論文を選定した。テーマ別統合は、認知的、形成的、社会的、制度的、倫理的の5つの領域に分類して整理した。

調査結果によると、キャリア初期の外科医は自らの能力を過大評価することが多く、この傾向はダニング=クルーガー効果と一致している。短期の商業的研修コースや体系的なメンターシップの欠如は、時期尚早な自律性を助長している。一方、ソーシャルメディアは慎重さよりも承認欲求を強める一方で、組織体制は継続的な監督を提供できていない場合が多い。対照的に、体系的なチェックリストや安全文化は、衝動的な意思決定に起因するエラーを大幅に低減する。


いや〜〜 おもしろい!
ちなみに ダニング=クルーガー効果 については,こちらを参照

これって 正直 アタシも経験した.
外科医として仕事を始めて6〜7年目.
専門医も獲得して,7〜8割くらいの症例の対応が ひとりで出来るようになったころ.
なんか,妙に自信満々の気分で,オレってけっこー イケてんじゃね! ってかんじ

ところが このあたりから ちょこちょこ上手くいかないことも経験する.
(あたりまえだよね)
ここで,大事だったのが メンターを含めたコミュニティ・医局だった.

「そんなん 当たり前やん,アホ!」
「わかった,オレが対応しておくから,まかせとき」
「(資料コピーを手渡して)これ,読んどけや・・・」
「メシ,行こうで,めし」
「オレも同じこと やったわ・・・」 

多くのセンパイ,同僚から コメント,お叱り,慰め,励まし・・・
ほんとに ありがたかった.

この論文でも 重要なファクターとして メンターと倫理観の欠如,最初のトレーニングの経験が挙げられている.
この重要な要素を持ち合わせているのが,(良くも悪くも) かつての医局制度だったと思うよ.


BSSの背景にある5つの要因として
過信、メンターの不在、短期集中型研修、ソーシャルメディアからの圧力、倫理的鈍感化が挙げられてる.
いまは,SNSの圧力が そーとーに強い要素のように思うわ.

やっかいなのは,外科医が「ガンバル」方向がこっちに向かうと,簡単にBSSを引き起こし,外科的判断力の低下をもたらすことだと思うんだけど...

いずれも 外科医個人の力でも解決できる内容ではあるが,そうカンタンではない.
ニンゲンは,気持ちのいい方に いくようにできている.

ましてや 社会としてこうした問題を解決するのは 困難だろうし,しばらくは加速すると思ってる.

この問題で相互に関連する領域,認知的、形成的、社会的、制度的、倫理的領域を描いた五角形の概念モデルから,これらの領域の相乗的な劣化が、判断力や患者の安全を損なう中心的なリスクゾーンへと収束していくとしている.

関連記事