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外科と芸術

術後は圧迫したほうがいいのか

一般的に 手術後には 創部を圧迫するんだけど

その理由は 次の3つ

1.後出血の予防

手術では皮膚や筋肉を切るので 当然出血するよね

基本的に 出血点は 電気メスとかで止血するので 手術後は あまり出血しないんだけど それでも血圧の上昇などで 出血することがある(これを後出血・こうしゅっけつ・といいます)

多少の後出血は問題ないんだけど 出血が多くてキズの中に溜まる状態(これを血腫といいます)になると 感染を起こしたりキズの治りを悪化さることがある

だから 後出血の予防のために圧迫をして止血をするというわけ

2.手術後腫脹の軽減

手術後は 腫れる(腫脹というよ)

これは組織を切ったり焼いたりすることによる炎症や リンパのうっ滞によるもので 損傷に対する生体の自然の反応なので 仕方のないことではある

ただ 腫脹は少ない方が 治癒は早いので 圧迫をする(早期社会復帰ということで早く減らしたい・・というのもあるけど)

3.組織の癒合の補助

切った組織が もとどおりにくっつくことを 癒合といいます  これに必要な期間は およそ1週間  おおくの場合抜糸を1週間くらいでするのは この理由からだ(強度的には まだ完全ではないけどね)

で 皮膚をはぐような操作をしたときは はいだ面もくっつける必要があり ここがくっつくのにも 1週間くらいかかる (フェイスリフトなんかは はぐ手術の代表です) はいだ面は縫ってくっつけることがしにくいので 圧迫をして癒合させる ということなんだ

こうしてみると 圧迫にはいいことばかりと思うかも知れないけど マイナスのこともある

ひとつは 圧迫による血流障害

圧迫をすると 組織への血のめぐり(血流)は低下する

多少の低下は問題ないけど あまり強く圧迫すると血流が障害されて 治癒に必要な酸素や酵素、抗菌薬などが届かなくなる

その結果 治癒が遅れるということなんだな

もうひとつは 腫れの長期化

さっき 腫脹を減らすために圧迫するって言ったのは まちがいない

ただ 圧迫って 結構 難しいんだ

たとえば ふくらはぎの手術をしたとしよう

で ふくらはぎをしっかり圧迫すると どうなるかっていうと

こうなるよね

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でも こうすると 足先への血流が遮断されて少なくなるし 静脈の戻りも悪くなる 結果的に足先が浮腫む(むくむ) これじゃあ 副作用が増えるから意味がない

じゃ どうするかっていうと こうするんだ

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こうすれば さっきのことは 起こらない

(註:ちなみにここで拝借したイメージは パナソニックのマッサージ器で 間歇的に圧迫と解除を繰り返してくれる だから持続的な圧迫というわけではないので おまちがえないように   ちなみにワタシもこちらを愛用してます)

パナソニック エアーマッサージャー レッグリフレ 温感機能搭載 ピンク EW-RA86-P

それ以外にも 圧迫すると自分で動かさない状態になるので 浮腫が遷延する (エコノミー症候群っていうのでもわかると思う)

手術後は できるだけ早めに動かして(リハビリという) 正常の状態を維持するようにした方が トータルでみるとキズを早く治すことになるんだ

まとめるとさ 圧迫には 良い面と悪い面があるので じょうずに使い分けることが大事ってことなんだよ

ときどき 聞かれることを ざっとまとめてみるから 参考にしてね

フェイスリフト

その昔は 5日間 顔を包帯でぐるぐる巻きにしてた(アタシは見たことないけど 先輩から聞いた)  それでも 腫れは今より激しかったらしいよ

でも今はさ 出血の具合によっては ぜんぜん圧迫しないこともよくある

なぜかっていうと まず 以前とくらべて ほんとに出血しなくなったから

薬・麻酔・手術器具・技術の進歩のおかげだと 思う

手術中に血が出ないから 手術後も出ない だから止血の目的では 不要ってこと

それから よく使うバンテージのタイプだと 圧迫できる顔面の範囲は限定的でしょ

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だから 長く圧迫すると かえって眼瞼とか唇とかが腫れてきちゃうんだ

ポリ・顎頸バンテージ : 株式会社 高研

もし完璧に圧迫しようとすると デストロイヤーみたいなマスクがいるね・・実際 市販されてるけど使ってるって話は 同業者からも聞いたことない

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(医療機器販売メーカーKOKEN製品)

ポリ・全顔面バンテージ : 株式会社 高研www.kokenmpc.co.jp

それに 最近は リガメントの処置をするので 剥離した面が糸でキルティングみたいに 縫い付けられた状態なんだ

つまり 癒着目的でも もうあんまり長くしなくてもいいってことだよね

ま 圧迫するにしても 手術後24時間くらいにして その後はなにもしないほうがよいと思う

テープやギプスで 5〜7日前後 圧迫することが多い

後出血予防だけなら 1日で問題ないんだけど 鼻の皮下を縫い付けて固定することは ほとんどしないので 組織癒合の補助のために5日くらい 圧迫した方がいいと思う

骨切り

骨切り手術が 他と違うことは なんといっても骨からの出血は 止められない ということ

もちろん 特殊なワックスとか止血用のスポンジとかを使う手はあるんだけど それらは骨の治癒にはマイナスなんだ だから原則 使わないようにしている

じゃ どうするかっていうと 骨や皮下などの組織をぴったりとあてがうことなんだ そうすると 治癒機転が生じて 止血される だから圧迫は24時間くらいしたほうがいい

ただルフォーとか圧迫できないものもあるし 吸引ドレーンをいれて 陰圧で圧迫する というアプローチもあるので ぜったいということでもない

 まとめ

圧迫についてお話しました

もちろん これ以外にもさまざまな考え方があって ここに書いたことだけが正しい というわけではありません

なぜなら 腫れやその吸収のメカニズムについては まだ完全にわかったわけではないからです  今後 それらが解明されることで 圧迫の意義ややり方が変わる可能性もあります  それが医学・医療なのです