そんなに怒鳴らなくても・・
学会で、怒鳴りあいの場面に遭遇することがある。
「先生のやり方は、患者の利益を軽んじている。私なら絶対にやらない!!」
「許せん!あんたはそれを自分の家族に対しても、やるのかっ!!」
真っ赤になって叫んでいる。
プルプル震えてる。
こ・わ・い・・・・
言っていることも分からないではないが、そこまで激昂する内容ではない。
ご自身がベストと信じていることの価値と異なるのが、気に入らないようである。
”アナタの正義感もすばらしいのですが、それは世の幸福の一側面に過ぎないんですよ・・・”
と、思いながら聞いている。
医師は、18歳くらいから医学教育を主に受けて育つ。
だから医師の価値観は、少なくとも仕事の上では、科学的な解析や分析法を基本としたものになりやすい。
「**の条件下での試験で、有意差が検定で示されている」といった、”医学的に正しい”解釈を、よいものとする。
ただここで、実際の医療とのギャップが生じる。
「治療」のアウトカムは、医学的な成績だけでなく、患者の満足度であったり費用対効果など多くの要素から成立している。
たとえば、ある薬で延命率が上がったとしても、それは医学的な成績の向上であって、医療の質の向上と同じではない。
薬の副作用による身体活動性の低下といったサイドイフェクトがあれば、それも含めてアウトカムを評価する必要がある。
専門職の価値観は狭くなりやすい。
真面目に取り組んでいる人ほど、短絡的になる傾向がある。
できるだけ大きなループを描けるように、なりたい。
自戒も込めて、そう思う。