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Computer assisted surgery

横浜市立大学の前川二郎先生が、AO advanced course に呼んで下さった。
今回は、simulation, computer assisted surgery (CAS)がテーマだ。

残念ながら日本の形成外科は、この分野で世界に出遅れている。
そのことは、一昨年にインドでのAO course に参加して痛感した。

理由はいくつかある。
もちろんコストによるものも大きいが、なにより手術という治療に対する考え方が影響していると思う。

日本の外科の技術は、世界的にも高いレベルにあるが、それは個人や医局などの組織が、常に切磋琢磨し良い成績を求めた結果である。

こうした技術の発展形態は、先頭を走る人たちが牽引する、プルアップの構造とよばれるもので、日本文化の根底にある発想の一つだ。ただ一方で多く人が自身でフォローしてゆく努力や、参入者を持ち上げる構造を維持しなければ、次第にその分野が細長くなったり途中でちぎれたりするといった、問題も含んでいる。

この対極にあるのが、ボトムアップだ。さまざまなアプローチで、全体の底上げを図る合理的な形態である。
たとえば高度な技術力に代わる優れたデバイスの力を借りることで、安全で確実な結果が比較的容易に得られる、というアプローチだ。ピラミッドの底辺が持ち上がるため、平均値は容易に上昇する。

ただ残念ながら、このボトムアップの発想がなかなか浸透しない。

なぜなら、経験値に支えられた高度な技術ほど「よい」とする考えが強いからだ。
高度な技術がよいことに異論はない。私自身も、それを目指してきたし、今後も努力を続けるだろう。しかし最近、こういう発想は外科医療の向かうところとは、少し違っているような気がしている。

現在のように手術治療の質自体が高くなっている状況では、より高度な技術を極めることには、相当の時間やコストがかかる。暗黙知の伝達量には、限度がある。それよりも、ボトムアップにより平均値を高めた方がよいのではないかと思う。

CASは、その目的にかなったアプローチだ。

機械に、得意な部分をどんどん委譲してはどうか。
車の運転は、多くの技術が人の役割を肩代わりすることでずいぶんと容易になり、安全に関わる認識動作に人の能力を配分でき、事故も減った。
同様に、すぐれたデバイスはエキスパートに匹敵するような正確さと安全性を持っていて、疲労ということもないので外科医の体調による安全性のばらつきも減少するだろう。

でもそうなれば、いずれ外科医はお払い箱になるのではないかと心配する人がいるかもしれない。

わたしは、絶対にならないと思う。
なぜなら、手術には、decision making が必要だからだ。
それには、医学的な要素だけでなく、「その患者さんの人生」という要素も織り込まなくてはならないが、そんなプログラムは、おそらく誰にも書けない。

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