3度目
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実は、この冬に鎖骨を骨折した。
不覚にも、楽しいテレマークスキーの最中だ。
10年近く滑っているのだが、まだまだ初心者の域を出ない。
ヒールフリー(踵が浮く)なので、不安定でしょうがないのだが、
それが、なんとも楽しい。
バッチリ板に乗れた時の気持ちよさは、格別だ。
今回も、快調にふわふわ、ゆらゆら滑っていた。
天気もよくて、気持ちいいなぁ〜
このところ、仕事ばっかりだったからなぁ〜
すこし傾斜が強くて、バーン気味のところを、うまく乗り切った時だった。
おちょ・・ちょっっと。
山側のエッジを引っ掛けて、バランスを崩した。
でも、転ぶのは、慣れている。
そう、いつもの、ことだから。
「あれ〜、また転んじまったよ〜
ん? 左肩が、痛いぞ?
打ったかなぁ」
ゆっくり起き上がろうとストックを刺そうとしたら、
バギっつ・・・と音がした。
・・・ッ・イ・タ・・
久しぶりに経験する痛さだ。
頭の中の記憶から、痛みを検索する。
小学5年の時に、崖の上から飛び降りて遊んでて、
左のcolles骨折をした時の痛み
高校2年の時に、サッカーの試合中、背中から倒れる時に手をついて
右のcolles骨折をした時の痛み
と、同じだ。
う〜〜ん、これはやはり、骨折か。
同行してた医局のスタッフに、連れてってもらった
近くの病院で、X線を撮ってもらった。
「あ〜、折れてますね。粉砕、うん。オペかなぁ〜〜」
翌日に、ウチの大学の、すごくいい先生が診て下さって
「センセもお忙しいでしょうし、保存でいきましょう!」
と力強く言って頂けたので
「ハイ、よろしくお願い致します」とお任せした。
ケガのタイミングがよかったため、仕事に大きな支障がなくてすんだ。
もちろん、スタッフがたくさんカバーもしてくれたことも大きい。
それでも、しばらく洗髪やら着替えやらが辛くて、はあはあ言いながらやっていた。
なかでも、いちばん辛かったのが、スクラブ(手術衣)の着替えだった。
なるべく大きいサイズを選んで袖を通すのだが、首と反対の手を通すたびに、肘を持ち上げなくてはならない。
あまりの痛さで、首と腕を通す途中で、しばしば止まって唸っていた。
「せんせい、お手伝いしましょうか? こっちひっぱったらいいですか?」
お隣で着替えていらした、他科の教授が見かねて、申し出て下さった。
「い、いえ、ああ、ありがとうございます・・じゃ、この袖のところを・・」
「いいですか、じゃ・・」
いたたたたたたたててぇ〜〜〜〜
今回、身体に制限が加わることで、周りがいつもと違って見えたことが、おもしろかった。
今ではもう、ばんざいができる。
からだは、ケガの前に戻ったのだが
あのときに見えた景色が、すこし気になっている。