コピペのおもひで
このところ、学術関連でのコピペが問題になっている。
あまり大きな声で言えたことじゃないが、実は、私も、同じようなことをしたことがある。
学生時代のことだ。
ある診療科からレポートの宿題がでた。
それまでは、
1.図書館に行く
2.適当な本を3~4冊、見繕う
3.該当箇所の論述を読む
4.知識をまとめる
5.形式に合うように、文章を練る
6.レポートにまとめて記載する
と、まっとうな方法をとっていた。
ただ、実際のところ成書であれば、記載がとてもよくまとまっていて、改めて書き直す必要がほとんどない。
不足している部分があれば、別の本からの内容を転記、挿入すればよいだけだ。
そのころは、もちろんワープロなどまだまだ一般的でなく、こうした作業は、自筆でしなければならない。
しかし、私は、字が汚い。しかも急いで書くクセがあって、いまでも速記のような字だ。自分でも、判読不能の場合がある。
だから、人に見せるレポートとなると、それは時間がかかった。
「同じ文章を書き起こすなんて、ちょっとなぁ・・メンドーだなぁ。みんなよく黙々とやるなぁ」
図書館で、天井を見上げていた時にふっと思いついた。
「そうだ、これをコピーして、きれいに切り貼りすればいいじゃん。」
さっそく、切り貼りを始めた。
フォントやサイズが違うが、仕方ない。許してもらおう。接続詞は、ていねいに手書きで付け加えた。
文章の幅も、きれいになるように揃えた。これが一番たいへんだった。
納得のいくものができあがった。
よし!これは、いい。内容はバッチリだし、なにより、すごく読みやすい。自筆より、ずっといい。教官も喜ぶだろう。
嬉々として提出した。
2日後、教務課の連絡用掲示板に張り紙があった。
下記のもの、○○講座、**助教授の室まで来ること
ん・・私の名前が・・なぜ・レポートはちゃんと出したんだけど・・
トントン、失礼します・・すがわらです・・・
机に座っていた助教授が、こちらを振り向いて私の顔をみた。
みるみる間に、真っ赤な顔になっていくのがわかった。
「お、おまえかっ、こ、こ、こんなレポートっ、み、み、見たことないわ!!
な、なめとんのかぁっ!!」
一瞬、何のことかわからずに、ポケッとしていた。
あ、あの切り貼りのことか。
もしかして、どこか小さく切った紙片の糊が剥がれて、文章が飛んじゃったのかな、と思った。
しかし、事態はそんなに呑気じゃなかった。
とりあえず、平身低頭謝って、再提出ということで許して頂いた。
今、思い出すと、そりゃ、怒られるわ、と思う。
そーとーな事を、やっちゃったのかもしれない。
でも、科学の本質は、情報や知識の共有にあるし、引用はそれの継承作業であると思っているので、そのこと自体に問題があったとは思っていない。しかも、科学論文の文章って、どう書いても似るし、言い回しがどうこうといったことでもないだろう。
それよりも、科学には、論文のその先に進むことが求められていると思う。多くの知識や経験の積み重ねの上に立って、次のステージを見つけに行くことが、重要なのではないか。
そんな負い目?もあって、ウチの学生のレポートに対しては、ちょっと採点が甘いかもしれない。