KSPRS 2016
もう去年のことになるが、学会の50周年記念とのことで、韓国形成外科学会:KSPRSにお誘いをうけて、参加する。
日本は来年がちょうど60周年なので、韓国は10年ほど遅れてのスタートと言える。
後発、といっても、このところの韓国の形成外科は、いくつかの点で日本の形成外科を追い越したなと思うことが多い。少なくとも、基礎研究を除き、ほぼ同列になったと言ってもいいかもしれない。
こんなところにも、パワーシフトの影響がみられる。
そんなシフトにおいて、原動力となったのが、美容外科への方向転換だ。
実際、今回のプログラムの8割は、美容外科関係である。
もちろん、形成外科の仕事がないわけではないだろう。
しかし、需給関係でいえば、現在の数の形成外科医を養うには、十分ではなくなっている。
そうなれば、後進の指導にも影響が及び、存在が不安定になる。
(もっとも、これは、先進国の形成外科に共通した悩みなのだが・・・)
ならばということで、さらなる市場を美容外科に求めた。
クレバーな選択だと、わたしは思う。
翻って日本はどうか。
効率を考えない過剰な診療で、価値を主張したり、保険診療に寄生する形で市場を作ったりと、いまだに官への依存体質から脱却できないでいる。学会が、ほとんど大学関係者で運営されていることからみれば、仕方のないことかもしれない。
20年以上大学に所属していたからよくわかるが、病院で保険診療だけを行っていると、どうしても世の中全体の市場の動きに疎くなる。
かつては、最先端の治療という宝刀があったが、今や標準化や医療安全、医師教育といったしばりからか、それも鈍くなりがちだ。一部の高度医療を除き、開業医の方が、裁量と投資の面からも優位であることは否めない。
現状を維持する方向性では、早晩、日本でも多くの形成外科医は仕事にあぶれるのではないか。
技術を広く世に還元するのが医療者の役目なのであれば、もっと必要とされる方向へシフトしてもよいのではないか。
町医者となった今は、そう感じている。