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学会ポスターの印刷

11月の学会ポスターは、原画をイラストレーターの小田隆さんに、デザインと印刷を金沢美術工芸大学 視覚デザイン専攻の坂野 徹先生に依頼した。「学術的ポップ感」というわがままでむつかしいリクエストに、完璧なバランスで仕上げて頂いた。

このあたりのニュアンスというは、ほんとうに微妙で、もちろんカラーバランスやレイアウトといったテクニカルな要素があるのは間違いないのだけれど、それ以上にそれらを有機的につなぎ合わせて、ひとつの世界観を作り出すかというセンスこそが、プロのテクニックと言われるものだと思う。

まさに、そういったプロの技をみることのできる仕上がりです。
(このあたりは、顔の形成外科、美容外科にも通ずるもので、切る、縫うといった医学的テクニックをマスターしても、プロにはなれない。)

板野さんに印刷過程の解説を頂いたので、ご紹介します。

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不思議な雰囲気のポスターに仕上がりました。一見、2色に見えますが、特色4色印刷です。
いわゆる「普通の」カラー印刷というのは、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの色の原色3色+黒のインキを掛け合わせることで、たくさんの色を表現しています。ルーペで印刷物を見ると、この4色の細かい点が見えると思います。
それに対して、特色とはインキ自体の色が緑だったりピンクだったりします。絵の具の色をそのまま印刷するようなものです。つまり、普通のカラー印刷では出すことのできない。金銀や蛍光色、白などを刷ることができます。掛け合せで表現できる緑やオレンジにしても普通のカラー印刷よりもはるかに鮮やかな色で刷ることができます。
特色4色の版は以下の通りです。黒版(マットスミ50%+スミ50%)=原画をモノクロにしたものです。銀版(銀)=黒版の反転です。白いところが黒く、黒いところが白くなります。オレンジ版(蛍光オレンジ)=文字部分に100%で刷ります。金版(赤金50%+イエロー50%)=頭蓋骨の歯の部分の挿し色に使います。字のところが蛍光オレンジになります。モノトーンに近い画面だと銀はかなり青く見えます。

写真ではわかりづらいですが、右が色校正、左が完成品です。色校正というのは、本番の印刷をする前に色のバランスを確認するためにおこなう試し刷りのことです。普通のカラー印刷の場合は精度の高いプリンターでおこなうことが多いですが、今回は特色印刷なので、実際のインキで刷る校正を出しました。ポスター下の文字情報を10mm上に移動しました。

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色校正の段階では、黒をマットスミ80%+スミ20%で混ぜて作っていましたが、マットスミが多めの配分だと黒が浅い印象だったので、本番では、マットスミ50+スミ50に変更して黒をシメました。

右が原画、左が完成品です。原画では歯の部分だけホワイト絵の具を使っています。どういうことかというと、紙色より明度が高くなっています。これを表現するためにポスターでは歯の部分だけ銀色を刷らないようにしました。つまり、原画とポスターの対応は、紙色100%=銀100%、ホワイト着色=紙色(銀0%)となり、相対的に明度差が同じ対応関係になります。絵の上に乗せた小さい文字がハッキリ読めるのも特色ならではです。

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