平成の財前五郎
財前教授で、思い出したことがある。
白い巨塔と言えば、医療の純粋さと権力闘争の醜さとが、わかりやすいコントラストで描かれていてとても魅力的なストーリーだ。
個人的には1970年代の、田宮二郎版がもっとも印象深い。
隙間のないクールさが、飛び抜けていた。
ああした雰囲気は、私が医師になった1980年代にはまだ残っていた。
大名行列のような教授回診はよく見かけたし、人事を巡る激しいやりとりや、
競合する診療科のカンファにおける険悪な雰囲気も、しばしば経験した。
幸い形成外科のようなマイナーな診療科では、そうした光景は少なかったが、
大所帯の外科や、血の気の多い心臓血管外科などでは珍しくなかったようだ。
今となってはなつかしい、そういう時代もあったよなぁ、と思いに耽っていたら、あるメイルのことが頭をよぎった。
ある患者さんの紹介に関して相談を受けた際の、やりとりから。
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・・・・私の大学の教授選がまだ決まりそうにないため、医局に相談もお願いもできません。さりとて先生に患者さんをお送りすれば、レジデント経由ですぐ医局にバレてしまいます・・・こんどの学会も、行けばまた○○先生に捕まって、患者を送れ、と圧力をかけられますので不参加のつもりで・・・・
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平成に財前五郎は、まだ生きていた!