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標準化その1

先日の基礎学会で喋った、顔のnormalization, averageness, attractiveness について。

形成外科医にとって、顔面形態の標準を知り、それを治療に反映させる技術を磨くことが、仕事のすべてといってよい。
耳の絵を正確に描けないものが、それを作れるはずがない。顔面を粘土できちんと作り上げることができないものに、それを細工できるわけもない。

しかし現実は悲しいかな、最初のステップすら満足にできない形成外科医が少なくない。
それなのに、技術ばかりを学ぼうとしたり、自己満足の技の世界に酔っていたりする。

だから、顔面の先天異常の方の治療に際しても、ゴールが見えないまま技を繰り出す。
そして、結果的にabnormal から別のabnormal へ、シフトさせるという、愚行を行う。

治療の目的は、顔面のNORMALIZATIONだ。”手術をすること”でも、“○○法”を行うことでもない。
手術を受ける方の、社会機能臓器である「顔」を治療するのだ。顔の形という病気を治して元気に暮らしてもらう。

つまり、患者さんがそのコミュニティーで健全に暮らすことのできる表情にして差し上げることが、われわれの仕事である。

街を歩いていても、誰も振り返って見ない
茶店でお茶を飲んでいても、隣の席のカップルにこそこそ言われない
友達からも顔のことの会話で気を遣われない
初対面の人が普通の笑顔でこんにちはと言ってくれる
混んだ電車で自分の周りだけが妙に空いていたりしない。

そんな、目立たず、普通で、大勢に紛れた小さな一人として、静かでも豊かな人生を送ることができる、そんな「ふつう」の顔について、形成外科医はもっと深く知らなくてはならない。綺麗、可愛い、美人、イケメンなどは、そのずっとずっと先の話だろう。

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