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セファロ分析ってホント罪作り

セファログラムってのがある.
100年近く前からあるのかな・・・少なくともアタシが医者になったときには あった.

当時は とっても優れたいいものだった.(もちろん今でもだけど・・)
なにがって 骨の成長を見るのに.

骨 とくに顔面骨の成長っておもしろくて 赤ちゃんの時から思春期を経て大人になるまで じつにユニークなパターンで成長する.

5歳までは頭の骨が ぐわーーーっ て大きくなって その後にアゴが伸びてくる.で そのアゴは思春期を迎えるあたりからまた ぐわわーーーっ て伸びてきて オトナの顔になる.

この成長の具合を診るのに最適なのが セファログラムなんだ.

じつはアタシも学位(博士号)のための実験が ラットの頭の骨の成長観察 ってやつでして 自作のセファログラム撮影装置を使って ちっこいラットの頭を何百枚も撮影した経験がございます.

で・・このセファログラムってのが 分析にも使えないかってことで アメリカの矯正歯科医がこぞって分析の乗り出したのが 1950年代.

Downs法,Northwestern法,Tweed法,McNamara法などなど 流派がいーーーっぱいある.亜流,分派も入れたら 数え切れないほど.
あ ちまたの美容オタクに人気のEラインはRicketts法に含まれてる.
まあどの流派も ウチのがイチバンっていってるわけなんだけど 正直 どれもたいした差はない(マニアは違うっ! って怒るだろうけどね)

いずれにしても分析自体になにか間違いがあるわけではない.何を観察するのには どれが優れているか ってくらいの違いであって 万能な分析法はない.

で これらの分析のなにが問題なのかというと 「顔のバランスの分析に用いること」.もう少し言うならば「顔の良し悪しについて判定する」ことに使われることなんだ.

矯正歯科や顎顔面外科で 手術目標を設定するときにはセファログラム分析をおこなう.これ自体は必須の作業で やらない医者はいないだろう.
問題は その分析結果から得たデータを正しい値(というかただの平均値)に修正することでバランスのとれた顔になると 思い込むことなんだ.

この2つの絵を見てみよう.

どちらもシミュレーションで作った画像なんだけど どう見えるかな?
左の方が 鼻が大きくて ちょっと下顎がシャクって見える・・
右の方は 鼻が小さくてバランスよく見える・・・
たしかに・・

でも実は 横顔のラインは まったく一緒なんだよ!

なにが言いたいかっていうと セファログラムは側貌(プロファイル)分析といっても 顔の真ん中(正中:mid sagittal line)だけを捉えた側貌分析ということ.

この絵からわかるように 実際のプロファイルっていうのは mid sagittal line だけでなく 鼻翼や頬の大きさなどにも影響されるものだということです.

もちろんセファログラム分析は 顔面骨の手術をする際には 必ず行います.ただ そのデータをどう扱うか というのはほんとに難しい.
いや ほんとに やっかいなんだわ・・・

このあたりは こちらにも書いたので よろしければご覧下さい.

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