標準化その4
さて、こうした今の状況を変えてゆくには、どのようなアプローチが有効なのであろう。
もちろん形成外科と美容外科は相補的な存在であるため、それぞれが歩み寄るのがよいと思うが、35年もの別居をいきなり解消し同居できるとはとうてい思わない。それぞれの独立性を保ったまま双方で欠けている要素を補完しつつ、win-winに持ち込めるかというところだろうが、たやすい話ではない。
形成外科にとって美容外科領域は、手技的には馴染みやすい近場の領域であり、市場のサイズ、自費診療科という点からはとても魅力的だ。一方、美容外科にとって形成外科は厳しい競合相手のようであるが、実はそのブランド力に負う機会が増えている。東大の開発した○○法とか、形成外科でも行われている○○術とか、信頼の拠り所に使われる。
抱える疾患の流動化と、保険診療の不確定さに不安を抱く形成外科。一方多様化する市場と他科流入を恐れる美容外科。つまり双方にとっては、美容外科市場の成長拡大とその適切なシェアにおいてのみ利害が一致するのではないか。言い換えれば形成外科領域における美容外科というカテゴリーの成熟が、さしあたってのスタートになるような気がする。形成外科というルーツを持った美容外科診療が、日本においてどれだけ標準化できるのかがキーだろう。根無し草でやってゆくのは、どうしても疲弊しやすい。そのことはこれまでの開業医院の経緯を見れば、よくわかる。
もちろん市場拡大後にはまた別の問題が生じると思うが、今よりは成熟しているだろうし、そのことは患者にとって有益であろう。