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マイクロファイナンス その2

自治医科大学に赴任したのは、1998年の夏だった。

私を含めてわずか3人の所帯だったが、これからは好きにできると、わくわくして来た。
ところが医局の台所事情を知って、愕然としてしまった。

医局の活動にはお金が要る。
ちょっとした文房具から情報管理のための共用コンピューター、さらには実験道具などさまざまだ。
これらを個人的に融通している医局もあるようだが、ただでさえ薄給の大学教員がそう簡単にできるものではない。

「あれがあれば、こういう実験ができるのに・・」
「これさえあれば、もっと仕事がラクになるのに・・」

悔しい思いをする度に、どうしたらこのスパイラルから抜け出せるのか、考えた。
さまざまな方法でお金を集めようとした。
しかしわずか3人の医局で、歴史も浅く先行きも不透明な、いわばベンチャーのようなところに出資してくれるところなど、そうはない。

苦しんでるときに、ある機械メーカーの営業の方が教えてくれた。
「先生、お金はね、集めるんじゃなくて、回すようにするんです。上手にていねいに使って、回すんです。」

回す・・か、近江商人の三方良し、ということか。
それからは、どうすれば綺麗に回るのかを意識した活動を行った。
おかげで、今に至るまで、医局は順調に運営できている。

それからずいぶん経ったころに、その営業の方が、転職前には消費者金融の店長をされていたことを知った。
きっと、お金をうまく回せないお客さんをたくさん見てきたのだろう。

そんなプロの方から、お金について教えて頂いたことに、今もとても感謝している。

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