自由と自立(2)
1998年に今の大学に赴任した時、形成外科は外科学講座の中の診療班という立場だった。
独自のポストはなく、講座費の割り当てもない。
すべて、外科教授の指示と許可の下に、という状況だった。
それまでいた東大では自由にできていたので、なんだか他人の家を間借りしているみたいで、少々居心地が悪かった。
ただ立場も年齢も低いので、どうすることもできなかった。
それでもやれることはたくさんあった。
まず、自前で医局運営費を調達した。
そして自分たちの、身近の仕事の環境を改善した。
道具を揃え、ちょっとしたシステムを調整し、人の意識を変えた。
単なる間借りから、小さくても自由に使える台所と風呂が手に入った感じだった。
ちょっとしたお金があれば、ささやかな自由と自立が得られるんだと、この時は思った。