古い外科医
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13年ぶりに車を買い換えた。
とても活躍してくれた車だったので、手放すのはさみしかったが、
さすがに足回りがふわふわしてきていたので、引退してもらうことにした。
新しい車に乗ってみて、とにかく驚いた。
もう、ありとあらゆるものが電子化されて、
ダイレクトにコントロールする操作系は、ほとんどない。
・・こりゃ、バーチャルじゃ・・
無段階のオートマなのに、マニュアル風シフトっていったって・・・
車を引き取って帰る道すがら、
信号待ちで突然止まるエンジンに、かなりビビりつつも
でも、意外に思いの通りに走らせられるなぁ〜と感じた。
それからナビにも、びっくり。
これまでは、一冊の地図帳をたよりに移動してたし、
わかんなくなったら iPhone のマップでちらっと確かめるくらいだった。
すごいぞ、ナビ!
リアルタイムで情報をアップデートして、それに基づいた分析で早道を示す。
走り慣れたルート以外の道を示すので、試しに走ってみたら、早いしラク。
表示形式がとにかく多彩で、
「この信号の角を右に曲がる」というアクションを、
通常の地図で、3Dで、俯瞰で、ラリーマップのような単純な矢印で、示してくれる。
おまけに、エレベーターガール(古!)のような声色で
「300めーたー先を、みぎに曲がってください。目印はガソリンスタンドですっ」
なんて、ささやいてくれる。
そんなことを、すごいぜ、すごいぜと興奮しながら話していたら、
「せんせ・・・あの・・それくらいの装備は、もう10年くらい前からあります・・」
と、ウチの若いスタッフに言われてしまった。
今まででも目的地にたどり着けなかったことはない。
ナビなんて、いらんじゃろう、と思っていた。
しかし、テクノロジーの威力にはかなわない。
素直にお世話になった方がよい。
かつてラパ胆が登場したころ聞いた、バンカラな外科医の言葉を思い出す。
「あんな、ちんたらしたやり方なんぞ、わしゃ好かん!
ほんなもん、腹開けて、ちゃっとすりゃ、ええんじゃ、ボケ」
今、胆嚢摘出術の95%は、内視鏡下で行われている。
テクノロジーの発達により、ラパ胆は開腹よりも早く、ラクで安全なものとなった。
そうだよな。
やっぱり、北向きで固定された地図を(粋がって)見るより、
進行方向にくるくる動く地図の方が、自然でいいよ。
地図の読めないオトコになっても、いいです。