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20年後にわかること

先日,パラパラとPRSを眺めてたら,骨延長法によるcraniosynostosisの治療のsystematic review 論文のなかに 自分の論文が引用されているのを見つけた.

骨延長法は,1992年に NYのMcCarthy が下顎骨に応用したのが最初で,以後,この治療法は頭蓋顎顔面外科(CMF)領域におけるトレンドになった.

そんな中で 1998年に発表したアタシの論文が,craniosynostosisの治療に応用した世界最初の症例だったと 紹介されている.
嬉しくも ちょっと気恥ずかしい感じだわ・・

ワタシが 頭蓋縫合早期癒合症の治療に関わるようになったのは,1990年ころ,卒後5年目くらいだったと思う.半ば無理矢理チームに組み込まれる格好だった.

無理矢理というのは,チーム監督が 医局の部下に順番に声を掛けていったいったけど,ことごとく断られて,結局,専門医前のアタシにまで降りてきた,というわけなんだわ.

だから 治療チームのメンバー(もちろんイチバン下っ端)になるように指令があったときには ええー なんでぇ〜〜 という気分だった.

なぜ 多くの外科医が嫌がるのか というと 当時,赤ちゃんの頭の手術は ほんとーーに タイヘンだったから・・・

体重が10kgにも満たない 1歳の赤ちゃんの頭皮を切って 骨切りして移動,固定する・・・
手術中は やわらかい脳実質が 開頭後に ぶわぁ〜〜っと膨らんできて さぞキツかっただろうな.手術してよかったなぁー と思う.

ただその一方で 体の半分以上,ときには全部の血液が失われるため 輸血を行い循環動態を管理しなくてはならない.

なんといっても 点滴を一本刺すのにも一苦労する とっても小さな体だ.今とちがってPICUなどない時代だし,
術後は ほんとにたいへんで,怖かった.2〜3日は帰宅できない.今でも思い出すと ちょっと苦しいワ(笑)

そんなときに 骨延長法が登場したのだから なんとしてでも頭蓋縫合早期癒合症に使いたい! と思った.子どもへの外科的侵襲を減らせるに違いない と確信したもの.

McCarthyの発表からしばらくして デバイスの試作や ラットの実験をはじめた.
数年して,それらがうまく進み 臨床応用にも問題ないだろう という段階までにきたのだけれど,最後の一歩が踏み出せない.

なぜなら 脳実質がどのように拡大するのかが わからなかったから.

ところが 1998年に入ってすぐの頃だった. 
British Jounal of Plastic Surgery に掲載された 一本の論文を見つける.
ネコを使った 頭蓋冠の拡張実験の論文だ.

ええーーーーーー!! なにこれ!!
ウソ! えっーー! これじゃん! これだよ これっ!

このCTスキャン画像こそが ワタシが知りたかった まさに答えだったのです.
これで 臨床応用に進めるわー! よかった〜

ほんとに 小躍りしました ハイ,しっかり憶えてます・・・

で さらに驚いたことに 著者は K.Fukuta という日本人ではないですか!

・・・

はい そうです.福田慶三先生だったのです(笑)
(不思議なご縁ですね ほんとに・・)

この論文のおかげで 臨床応用が開始でき,この論文に繋がったという意味では,福田先生は 開発者の1人といってもいいでしょうね.もちろん論文には ばっちり引用させて頂いてます!

さらに ありがたいことに,去年のCME,Distraction osteogenesis の30年後についてでも,世界初のDistractionによるFronto-orbital advancement ということで アタシの名前を紹介してくれている.

20年以上も経ってから あらためて評価されるなんて 思ってもいませんでした・・・あの頃は・・
ただ 赤ちゃんとアタシが ラクになればいいな ってことだけだったから.

シンドイことは いろんなうれしいことを運んでくれるような気がしますわ・・・出会いとかも・・・

ジジイの郷愁でしょうかね(笑)

まあでも 自然科学というのは,多くのひとのさまざまな努力によって 進んでいくものなんですね.だからこそ,気づきは みんなでシェアSHAREしましょうね.

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