医療と医学
医療は、きわめて個別なものであって、基本的にはそれを受ける個人の満足度によってその良否が決定される。
一方で、医師は医学を基本に治療を組み立てようとするので、サービスとして不十分なことがしばしばある。
癌の治療などでは、生存率といったコンセンサスの得られやすい(万人の価値にもっとも近い)基準があるので、それをガイドに医療を組み立てれば大きなズレは起きにくい。
ところが、美容外科や形成外科のように「美」とか「標準」といった曖昧なモノによる治療においては、しばしばズレが生じる。
形に関する「標準」のようなものがあるにはあるが、その価値は人によって様々だ。
(だれにとってもおいしい食べ物がないとか、誰にでも似合う服がない、というのと似ている。)
だから、腕のある医師がいくらよい結果を出しても、患者がそれを受け入れてくれなければ、残念だが医療は失敗になるし、医師の技量が不十分であっても患者の満足する結果が出れば、それは医療として成立しているといえる。
難しいという人もいるが、私は、そのわかりにくさを楽しんでいる。
たぶんそれは、昼と夜、表と裏といった抱き合わせだから、と思っている。