手仕事の意味
「○○先生なんて,フォロワー1万とかって まじスゴイですから〜〜」
「でも 1万人って どういう意味の数字なん?」
「どうって え〜〜 なんでしょう 見てくれてる人の数? ですか?」
「ふ〜〜ん 彼って外科メインにやってるんだよね・・・」
「ええ そうですね.症例写真みても そんな感じですし」
「いやね もしその いわゆる集客って目的でやってるんだったらさ・・・」
「はい・・・・?」
「何人のフォロワーに来てもらって,どれくらいの方に,手術を受けてもらうつもりなんかなぁーーって」
「・・・・よくわからないですけど・・・多いほうが いいのかなって思ってるんじゃないすか(苦笑)」
私がする手術の数は,決めている・・・いや,決まっている.
3時間かかる手術なら,せいぜい1日に2件くらいまでだろう
なぜなら,1人の患者さんに対し,手術前の計画立案,インフォームドコンセント、術後ケア,経過観察,場合によっては緊急処置などの時間を考慮すると,手術を含めトータルで6~7時間くらいは必要となる.
診療時間にそれらを行うとすれば,1日に1人の患者さんを診るというのが妥当な数字になるので,あとは診療日数に応じて年間手術数は自ずから決まってくる.週4~5日の診療ならば,年間で250人くらいが,上限の数字になろう.
先の1万人という数字が,正直どういう意味なのかはわからないが,そのうちの10%の方が来院されたとしても,1人の外科医あたりには相当な数のような気がする.
もし その数をこなそうとなると
- 手術を早くする(時短になるシンプルな術式を選択する)
- 手術を数人で手分けする(簡単な作業,高度な作業などを分業化する)
ということになるから,その先には
- 個別のデザインが困難になり手術結果の画一化
- 手術の質の低下と患者さんの満足度の低下
- 未熟な外科医による合併症の増加
- スタッフの増加による種々の問題
という ありがちな方向に陥りやすい.
外科医はどうしても職人的手仕事の側面がある.
癌治療などでは,標準化を図らないと多くの患者さんが困ることもあり,できるだけ診断から導かれる分類に応じて,治療を画一的に行うというアプローチが進んでおり,患者側からすればありがたいことである.
しかし美容医療では,そうする必要はないと思っている.
数は力だ,スケールは正義だ,といった文脈が未だにはびこっているさまを,30才まで昭和を生きたジジイが嘆くのも 不思議だけけどね(笑)