1. HOME
  2. ブログ
  3. 手術を考えている方へ
  4. 手術方法の単純な比較はできない

手術方法の単純な比較はできない

SSROは後戻りしやすい って聞いたのですが 本当でしょうか?

鼻中隔延長は 曲がりやすい って書いてあったのですが 大丈夫でしょうか?

といった類の質問が とっても多いんだけど

外科医からすると どうしてこういう質問が多いんだろう ってふしぎに思う

まず言っておきたいのは 術式の単純な比較はできない ってこと

なぜなら術式には

  1. 難易度
  2. 適応
  3. 術者

の3つが関与するからで つまり

  1. どれくらいの難度の手術を
  2. どういう状況の患者さんに
  3. どれくらいのスキルを持つ外科医がするか

総合点で評価されるんだ

たとえば わかりやすく二重の手術で言うと

埋没法と切開法のどちらがいいのか っていうような 単純な比較はできない

どういうことか っていうと

  1. 比較的難易度が低い埋没法であれば
  2. まぶたの脂肪が少なくて 皮膚が薄い患者さんに対して
  3. 少しトレーニングを積んだ外科医なら だれがやってもほとんどよい結果になる

つまり

(埋没法)

× (まぶたの脂肪が少なくて皮膚が薄い患者さん)× (初心者)= キレイ!

× (まぶたの脂肪が少なくて皮膚が薄い患者さん)× (達人)= キレイ!

っていうこと

同様に まぶたの脂肪が多くて皮膚が余っている患者さんに対して 埋没法は だれがやっても上手くいかないことが多い

(埋没法)

× (まぶたの脂肪が多くて皮膚が余っている患者さん)× (初心者)= 戻りやすい(取れやすい)

× (まぶたの脂肪が多くて皮膚が余っている患者さん)× (達人)= 戻りやすい(取れやすい)

つまり 埋没法はいい方法なんだけど 患者さんを選ぶ術式ってことになる

一方 切開法をみてみると こんな感じ

(切開法)

× (まぶたの脂肪が少なくて皮膚が薄い患者さん)× (初心者)= 左右差とかキズが目立つとかなど

× (まぶたの脂肪が少なくて皮膚が薄い患者さん)× (達人)= キレイ!

(切開法)

× (まぶたの脂肪が多くて皮膚が余っている患者さん)× (初心者)= 左右差とかキズが目立つとかなど

× (まぶたの脂肪が多くて皮膚が余っている患者さん)× (達人)= キレイ!

つまり切開法は どんな状況の患者さんにもよい結果を提供できる よい術式なんだけど 上手い下手といった技術に依存する すなわち 外科医を選ぶ術式っていうことになる

で 最初の質問の

「SSROは後戻りしやすい って聞いたのですが 本当でしょうか?」

に答えるならば

「移動量が8mm以下の後方移動で 術前に開咬がない(ハイアングルケースではない)ことと 移動後にシザーバイトなどが生じなく オベゲーザーダルポン法もしくはハンサック(short lingual)法により 0.9mm厚以上のプレートもしくはポジショナル・スクリューで固定する場合で かつ これがきちんとできる外科医が施行した場合には 後戻りはほとんどありません  だたし これ以外の場合では 若干あり得ます」

となります。

ぜっんぜん わかりませんよねっ!

でも これが正しい答えなんです

「鼻中隔延長は 曲がりやすい って聞いたのですが 本当でしょうか?」に答えるならば

「初回手術で 鼻中隔弯曲症や斜鼻あるいは facial scoliosis がなく 延長量が数ミリ以内で 鼻中隔軟骨か耳介軟骨もしくは肋軟骨を用いて 比較的スキルの高い外科医が行った場合は ほとんど曲がりません ただしこれ以外の場合では 若干あり得ます」

となるんだ

なんだか よけい混乱するよね

でも 術式というのは こういうことなんだよ

だから

「鼻中隔延長でオペをしたら術後に曲がってしまいました せっかくキレイになると思って手術を受けたのに・・・悲しくて外にも出られず鬱状態です・・」

ということに対しても

  • 初回手術だったのか 修正手術だったのか
  • 鼻中隔弯曲や斜鼻は なかったのか
  • 延長量は何ミリだったのか
  • 移植材料は何を使ったのか
  • どれくらいのスキルを持つ外科医が行ったのか
  • 術後に感染や血腫などの合併症はなかったのか

くらいの情報がないと いいも悪いも 評価できない

だから実際のところ 治療を受ける一般の方が 術式を比較するのはものすごく難しい  はっきり言っちゃうと 比較してもムダだと思う  なぜなら それを行う外科医のスキルがわからないから (どの外科医がうまいかヘタかは 同じ手術を経験している外科医にしかわからない あたりまえだけど)

じゃ どうするかっていうと 信頼できる外科医にお任せするか 外科医のスキルに依存しない 比較的難易度の低い術式で やってもらうか のどちらかになると思う

信頼できる外科医の見分け方は また別項で

おまけ1

余談になるけど 術式というのは 医者の間でも良し悪しが議論になるんだけど 科学的に評価する時には さまざまな条件をできるだけ揃えるのが 必須条件なんだ  (一人の外科医が ほぼ同じ条件の患者さんに 異なる術式を行って 評価する)

おまけ2

F1マシンは危険ですか?

(F1マシン)

×(初心者)×(250km/h走行)= あっという間にスピン(激突)危険!

×(達人)×(250km/h走行)= ほぼ安全

(F1マシン)

×(初心者)×(50km/h走行)= 安全(エンストやフラフラはあり)

×(達人)×(50km/h走行)= 安全(ピタッ!)

包丁はあぶないですか?

(包丁)

×(初心者)×(豆腐)= 安全

×(達人)×(豆腐)= 安全

(包丁)

×(初心者)×(カボチャ)= 気を付けてつかいましょう

×(達人)×(カボチャ)= 安全

関連記事