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大好きな道具9

MCDO 

道具シリーズ。
やはり、締めくくりは、これだろう。

MCDO(マクド
Multi-derectional Cranial Distraction Osteogenesis

2003年に、みんなで苦労して開発したデバイスだ。

そのころ私は、少し迷っていた。
「こんな侵襲のある治療なのに、得られるものとのバランスが悪すぎる・・」

頭蓋骨縫合早期癒合症の治療は、主に1歳前後の赤ちゃんに行う。
でも、手術の侵襲は、かなりのものだ。
だから外科医は、手術中も術後も、ほんとうにストレスフルだった。
もうだめだ、と思ったことも1度や2度じゃない。

もちろん、手術を受ける赤ちゃんだって大変だし、ご家族の心配を思うと自分まで苦しくなった。

当時は、ハロー型の延長器が開発されたばかりだったが、それがとても使いやすかったので、こんな感じのものでできないのだろうか、眺めていた。

ある時、ケイセイ医科工業の営業だったO君と話していて、ふっとそのことを思い出して話してみたところ
「センセぇ! それやりましょう!!」
と、意味もなく大声で言われた。

ちょっとびっくりしたが、「う、うん、そうだね・」と答えたのが、開発の始まりだったと思う。
(だから今でもO君には感謝している)

以前よりケイセイさんには、内固定タイプとか、いろんな道具を作ってもらっていたし、
スウェーデン留学中に、今の社長と専務が、デュッセルドルフであった医科器械展の帰りに遊びによってくれたりもしたので、お馴染みではあったが、
有り難いことに、この申し出を快く受けて下さった。

ただ、なんとなく、ぼーーっとあったイメージを現物にしてゆくのは、容易ではない。
しかも、患者さん(赤ちゃん)に使うものだ。
あらゆる不具合を想定して、デザインする必要があった。

燕の工場には、何度も通った。
材質や形状、使い勝手など、技術の方とアイデアを出し合った。
うまくいかず、苦しい時もあったが、楽しい時間だった。

夜は、新潟の美味しい酒を酌み交わしながら、遅くまで話し込んだ。
いっしょに温泉につかって、この装置による治療を、保険診療でカバーできる仕組みも考えた。

そうして4回にわたるメジャーな改変を経て、今のものがある。
ひとえに、彼らの全面的バックアップの賜物だと、感謝している。

今は、MCDOのおかげもあって、外科医だけでなく、赤ちゃんとご家族にもずいぶんと手術の負担が減った。
ほんとうによかったと思う。

だから
大好きな道具なんです。

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