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月夜のできごと

30年以上、車を運転しているが、こんなことは初めてだった。

新しい車で、快適にドライブしていた。
緩やかなカーブが続く、山間の高速道路だ。

ガラス・サンルーフ越しに、月明かりが差し込む。
「よいな。。。うむ。。よいぞ」

ハンドル越しに伝わる路面の振動を感じながら、自在なトレースを楽しんでいた。

その時だ。
何の前触れもなく、アクセルのパワーが一瞬、途切れた。
「・・・ん・・」

イグニッショントラブル? ターボラグ?
不安が、かすかによぎる。

少しレスポンスを取り戻したかのように感じたが、今度は
“ぶす、ぶす〜〜〜ぅ、ぶすっつ!”

・・・!・・あかん、これ、ガス欠じゃ!

これまでバイクでは、2度ほどガス欠を経験しているので、それが何なのかはよく知っている。
(そのときは、友達と走ってたので、タンクから分けてもらって事なきを得た)

ただ、それにしてもメーターはゼロのちょっと前だし、補給ランプもついてないし・・・なんでなん

しかし、そんなことを言っている場合ではなかった。
事態は深刻だった。

車の速度は、刻々と低下してきている。
ちょうど車線が1つになり、ここで止まると、ちと面倒だ。
高速での車の停止は、大事故につながりかねない。
車外に出るのも、命がけだ。

エコノミーモードに切り替え、いつでも車線を外れられるように腹を据える。
たしか、インターチェンジは近いはずだ。

○○出口 1km!!
おお、なんと、まんまみーあ!
出てしまえばなんとかなる。

ぶすぶすぶすす・・すす・・・う・・

幸いなことに料金所手前30mで、完全停止。

その後はレスキューにガソリンを持って来てもらい、息を吹き返すことができたが、
車のガス欠が、思いの外、厄介なことがよくわかった。

でも、今回、久しぶりに車を手で押したけど、学生のころに友達の下宿から帰るとき、
バッテリーが上がっていて、押しがけしたことを思い出した。

ちょうど同じように、冬の近づいた、月の明るい夜だった気がする。

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