外科感染症学会
外科感染症学会で神戸に行く。
創閉鎖の標準化を目指すセッションで、形成外科の立場からの話をさせて頂いた。
驚いたことに、すでに6割以上の外科医が、腹部の閉創に真皮縫合を導入されていて、
ここまできたんだ〜〜と、感慨深いものがあった。
また、ちょっと前のできごとだが、大阪大学の外科グループが、
大規模な前向きRCTをまとめて下さって、それがLANCETに掲載された。
ちょっとした事情があって、有意差については認められなかったが、
真皮縫合が有意義であることが示された、うれしい報告だ。
振り返ってみると、2002年から始めた、真皮縫合キャンペーン。
ちょっと数えてみたら、なんやかんやで50回ちかく、レクチャーをしていた。
じつは、このキャンペーン、当初は、まったくウケなかった。
「形成外科のセンセーは、まあ、きれいに縫うのが仕事だからね、
僕らは、ガンでしょ、やっぱり。
ね、ちょっとそこまではね。
ていうか、閉腹はさ、1年生の仕事だからねぇ・・」
そんな感じで、2006年までは、わずか5本のレクチャーだけだった。
やっぱり無理かぁー、とあきらめかけた矢先、H君が私の前に現れた。
H君は、私が前の大学で医局長をしていた頃から付き合いのあるMRさんで、
当時、真皮縫合にはナイロン糸が全盛の中、吸収糸を勧められて「うん、これいいね」と採用を決めた経緯がある。
「先生、ご無沙汰しておりました。この度、私が真皮縫合プロジェクトの担当になりました。
・・・やりましょう。お願いします。」
と静かに、まっすぐな声で言った。
なんとなく、その雰囲気に押されて、
「そうだね・・・うん、やってみよう・・か」
と、請け負ってしまった。
2007年のことである。
そこから、さまざまなトライアルを重ねた。
きわめてプライベートな空間でハンズオンを行い、外科医のスキル上の特性や、処置に関わる考え方を学んだ。
福島のウエットラボで、クオリティの高いムービーを作成した。
外科医にとっての、価値を探り、そこにフォーカスした。
なによりも、患者さんとドクターの利益になることを、訴え続けた。
そうした結果が、今の、この数字になったのだと思う。
アウェーで、たくさんの経験をさせてもらった。
ホームのように受け入れられた今、なんだか、アウェー感が増した。
感謝の気持ちとともに、静かに退場する時期なんだと、思った。