1. HOME
  2. ブログ
  3. Works
  4. 口蓋裂学会 札幌

口蓋裂学会 札幌

札幌での口蓋裂学会に参加する。

大学に来てから、多くの患者さんの治療に当たることになり、もう15年以上になる。

最初の手術を担当した子どもたちが大きくなり、もう高校を卒業する時期になっている。

学校や社会にでて、新しいコミュニティに関わることになる。
元気で暮らしてくれることを、祈るばかりだ。

口蓋裂の治療には、多くの専門科の知識と技術が必要となる。
しかも、それぞれが有機的に連動しなくてはならない。

そのため、赴任した当初は、その体制作りに、時間を裂いた。
幸い、多くの方のご協力を得ることができ、みんなが幸せになるようなシステムができあがったと思う。

その後は、それぞれの治療の質を高めることに、力を注いだ。
ところが、それは決して容易ではなかった。

新たな手技の習得には、学会参加、手術見学、論文・書物からの学習、指導などの方法がとられる。

これらのうち、学会発表がもっとも簡便に情報を得ることができ、しかも精度も高い。

なぜなら、学会は、経験した知識が多くの医師と共有される場であると、信じていたからだ。

しかし、残念ながらそうではなかった。
いや、とくに口唇口蓋裂の外科治療においては、その情報が閉鎖的であったということだ。

私がこの分野に注力し始める前は、マイクロを使った再建や、頭蓋顎顔面外科が仕事がメインだった。
そこでの学習には、あまり苦労をした覚えがない。
なぜなら多くの情報がオープンであったし、シェアする世界観があったからだと思う。

口唇口蓋裂では、なぜか、そうした雰囲気に乏しい。
競争の場というか、自分たちの施設(あるいは個人)の優位性を、誇示する感じが強い。

「そのやり方では、だめだ。われわれの方法がもっとも優れている。」
「あなたは良くないと言うが、私のスキルをもってすれば、何の問題もない。よい成績が得られる。」

理由はよくわからない。
診療科の相互乗り入れだったり、疾患数の問題であったり、結果の評価が曖昧であったり、職人的なスキルに依存する部分が多かったり・・・といろんなことが考えられるが、はっきりしない。

いずれにしても、正確な情報を得るのに苦労したことは、否めない。

幸い、情報を共有できる同胞と知り合うことができ、また治療を受けた子どもたちが、元気な顔を見せに私の診察室にやってきてくれることで、手技を向上させることができた。

最近は、時代の変遷と共に、先達の多くの経験が収束しつつあると感じている。

技と知識をきちんと繋いでゆくことが、この仕事の本質なのだと、あらためて思う。
その中で、歯車を少しだけでも回すことができたのなら、幸せなのであろう。

関連記事