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はじめの頃は、どこで仕事しても一緒だよ

医師が病院を移動する理由のひとつに、医局人事というものがある。

所属する医局(ほとんどが大学)がスタッフの勤務先として抱えている病院の人事交流を図るというのが、その名目なのだが、かならずしもそれだけではない。移動の対象になるのは、多くは卒後数年までの比較的若い医師だが、病院毎に疾患の偏りがあるため、広く経験を積むためというのも、その理由のひとつだ。だから新人が入局するこの時期になると、人事の話題に事欠かない。

「自分は、どこの病院に行くのがいいんでしょう?」「次は○○病院と言われたんですが、先生、どう思いますか?」などと聞かれることがあるが、私は、いつも「ヒマな病院じゃなければ、どこだって一緒だよ。」と答えている。あんまり親身になってくれないとでも思うのか、ちょっと不満そうな顔をされることもあるが、ほんとうだから仕方ない。

私は、仕事を始めてから10年ほどは、とにかく何でもした。
手術だけでなく、伝票や書類書き、機器のオーダー、レセプトチェック、患者や医療スタッフからのクレーム対応、会議など、医療サービスを取り巻くさまざまな業務を経験した。もちろん手術がいちばん好きだったが、それを存分に楽しむためには、周辺の業務の整理が重要だろうと、なんとなく感じていたからである。実際には、それなりに楽しかったし、そうしたモノの上に医療が成立していることを身をもって知ることができた。

オペ室の洗い場には、ちょくちょく顔を出した。手術器具の洗浄・滅菌は、専門職でなく近所のおばちゃんがやっている病院が多い。自動洗浄機で洗われた器具を、手術内容に合わせて揃えてゆく、セット組という仕事中にお邪魔しては、世間話をしながら他の診療科の機械を触らせてもらっていた。

「へえ、こんな器具があるんだぁ、便利そうだなぁ。今度、借りようかな。」
などとつぶやいてると、
「あ、それね、もう古くて使わなくなってるのがあるから、先生、持ってって。どうせ捨てるんだし。」
「え、いいの? わーありがとう。」
ということも少なくなかった。
(備品管理上、どうなってたのかは知らないけど、古参の洗い場のおばちゃん、結構な権限を持ってるんだよね、実は)

この時期は、さまざまな体験が、小さな引き出しにしまわれていく時だ。次の10年で何かを始めようとした時、たくさんの引き出しにしまってあった些細なものが、不思議と役に立つ。

だから、どこだって一緒だよ、といっても、こうした経験からのアドバイスなんだけど、今の人たちには伝わらないのかもしれない。

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