大胆な外科医症候群

おもしろい論文をみつけた.
The Bold Surgeon Syndrome 「大胆な外科医症候群」と題するヤツだ.
カンタンにサマリーをいれとく.
心理学、外科研修、倫理、患者安全に関する科学的エビデンスを統合した分析的レビューを実施した。PubMedおよびScopusから、過信、ダニング=クルーガー、外科的学習曲線、メンターシップ、形成外科におけるソーシャルメディアなどの用語を用いて、2000年から2025年までに発表された論文を選定した。テーマ別統合は、認知的、形成的、社会的、制度的、倫理的の5つの領域に分類して整理した。
調査結果によると、キャリア初期の外科医は自らの能力を過大評価することが多く、この傾向はダニング=クルーガー効果と一致している。短期の商業的研修コースや体系的なメンターシップの欠如は、時期尚早な自律性を助長している。一方、ソーシャルメディアは慎重さよりも承認欲求を強める一方で、組織体制は継続的な監督を提供できていない場合が多い。対照的に、体系的なチェックリストや安全文化は、衝動的な意思決定に起因するエラーを大幅に低減する。
いや〜〜 おもしろい!
ちなみに ダニング=クルーガー効果 については,こちらを参照

これって 正直 アタシも経験した.
外科医として仕事を始めて6〜7年目.
専門医も獲得して,7〜8割くらいの症例の対応が ひとりで出来るようになったころ.
なんか,妙に自信満々の気分で,オレってけっこー イケてんじゃね! ってかんじ
ところが このあたりから ちょこちょこ上手くいかないことも経験する.
(あたりまえだよね)
ここで,大事だったのが メンターを含めたコミュニティ・医局だった.
「そんなん 当たり前やん,アホ!」
「わかった,オレが対応しておくから,まかせとき」
「(資料コピーを手渡して)これ,読んどけや・・・」
「メシ,行こうで,めし」
「オレも同じこと やったわ・・・」

BSSの背景にある5つの要因。過信、メンターの不在、短期集中型研修、ソーシャルメディアからの圧力、倫理的鈍感化がどのように相まってBSSを引き起こし、それに伴う外科的判断力の低下をもたらすかを示した概念モデル。
論文でも 重要なファクターとして メンターと倫理観の欠如,最初のトレーニングの経験が挙げられている.
この重要な要素を持ち合わせているのが,(良くも悪くも) かつての医局制度だったと思う.
(自信過剰も 優れた上席医がいれば コントロールしやすいよね)

この問題で相互に関連する領域,認知的、形成的、社会的、制度的、倫理的領域を描いた五角形の概念モデルから,これらの領域の相乗的な劣化が、判断力や患者の安全を損なう中心的なリスクゾーンへと収束していくとしている.
いずれも 外科医個人の力でも解決できる内容ではあるが,そうカンタンではない.
ニンゲンは,ラクな方,気持ちのいい方に いくようにできている.
ましてや 社会としてこうした問題を解決するのは 困難だろうし,しばらくは加速すると思ってる.