顔と社会 1
一般に人は、顔の第1印象で、初対面の人の様々なことを規定する。
やさしそう、気が強そう、明るそう、暗そう、好意的、拒否的・・など。
こうした印象は、顔の造形が発する一定の「シグナル」によって決まる。
単純なところでは、タレ目はやさしく、ツリ目はキツイ感じ。
引っ込んだ顎は従順な感じで、しゃくれた顎は反抗的といった具合だ。
こうしたシグナルは、そもそもコミュニケーションのためであって、表情として多くの動物も持ち合わせているものである。
(口をとがらすとか、歯ぐきを見せる、鼻が膨らむ、耳が立つなどなど)
その種類はさほど多くはないが、ほぼ同じ顔つきをしている動物たちにとっては、十分なものなのだろう。
しかし、ヒトは違う。
生来の顔の造作の違いが、かなりある。
人種、民族が同一であっても、相当の違いがある。
つまり、人においては生まれつきの顔の造作自体が、すでにあるメッセージを含んでいる。
その結果、社会を形成して生きて行く人類が、さまざまな悩みを抱えることとなった。
(これは、豊かなことでもある)
1.醜いこと
醜いと人目を引く。
そして、ひとを不愉快にさせる。
本来、中身とは関係ないはずなのだが、マイナスのメッセージを出す。
人は、侮蔑したり、同情したりする。
好奇でもあり、哀れみでもある。
だから社会的侮蔑という刑が、中世ヨーロッパにあった。
ブタを模した面をかぶせて、市中に立たせるというもの。
醜さは、多くの物語をもたらす。
顔の骨が変形した、エレファントマン。
やけどによる顔の問題を抱える、オペラ座の怪人。
でか鼻消防士がプロポーズする、愛しのロクサーヌ など。
どれもが、醜い顔の造作というバイアスが、個人にのしかかった話だ。
明るい結末も、暗い結末もある。
醜いということと、何千年も向き合ってきたが、未だにどう扱って良いのか誰もわからない。