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顔と社会 4

4 顔とその向こう

仕事上、口唇裂やクルーゾン症候群など、顔面の形態異常にいつも向かい合っていると、
そうした形が発するさまざまな「シグナル」には、ほとんど影響を受けなくなる。

私にとっては、黒人や白人といったある人種の顔つき、と同じである。
顔の表情は見のがさないが、形が表現するものからのバイアスはかからない。

両側口唇裂の子どもを持つ母親が、手術後に、前の方が可愛かった、とつぶやいたことがある。
少し驚いたが、わからなくもない。
その形を含めて、すべてを受け入れていたのだから、ある部分の変化に違和感を感じたのだろう。

もちろん、その後すぐに、あたらしい正常により近い顔の形を受け入れ、変わらず愛していた。

仕事では、日々、顔の形を変化させているが、その向こうを見据えているつもりだ。

ただ、オペ計画を練る時は、目つきが変わるそうだ。
(何人かの患者さんから言われた)

たぶんその時は、彫刻の作品のように、顔の形だけを見ている。
その人ではない。

プランが立つと、もどる(らしい)。

「あばたもえくぼ」というが、顔とその向こうにあるものが、どういう関係にあるのか、
いまだに、よくわからないままでいる。

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