自由と自立(3)
赴任して3年経った2001年には、大学に講座再編成の動きがあって、講座に昇格した。
講座費といくつかの決定権を得ることができた。
小さな一軒家を借りられた気分だった。
ずいぶんと、自由になったはずだった。
しかし、他の診療科と建前上は横並びになったおかげで、
今度は何とも言えない、ルサンチマンのような感覚が生まれた。
スタッフの数、外来患者数、手術件数、収益高・・・
どれをとっても、かなわない。
せっかく手にした自由と自立が、また遠のいたような気分になった。
一時は、無理をしてでも増やそう、頑張ろうとも思ったが、早々に諦めた。
理由は、形成外科の本質からどんどん離れていってしまうような気がしたからだ。
自由だ~ と感じた瞬間、それは自身の拘束感からの解放だった。
しかしそんな解放も、次の瞬間、新たな拘束に捕らわれてしまう。
その原因は、比較だ。
比較に捕らわれている限り、どんな状況になっても、自由になれない。
だから、比べないことにした。
スタッフの数や、患者数や、収益などではなく、
形成外科という仕事の質を上げ、新しい価値観を創り上げれば、本当の自由が得られるのではないかと思った。