ブラックジャック
このところ外科医を評する言葉として、ブラックジャックがよく使われている。
“腕の立つ外科医” ということらしい。
ジョンソンアンドジョンソンがキッザニアで行っている
子ども向けの体験教室もブラックジャック・セミナーとのことだ。
でも、私にはちょっと 違和感がある。
手塚先生のブラックジャックは、腕は立つが無免許のもぐりの医師で、
患者の弱みにつけ込んで法外な治療費をふっかけるし、
患者の容態が思わしくなくても手術はうまくいったんだからと、相手にしない。
たまに、人助けのようなことをするが、それとて
「くそっ、なんでオレがこんな事をしなきゃなんないんだ」という感じだから
腕は立つが 果たして医療者として いかがなものか とも思う。
ブラックジャックは、人を切ることを仕事とする者の原罪を抱えた
外科医のアイコンと、私は捉えている。
治療という名の下に人を切る。
それは仕事でもある。
だが術後の痛みに歪む患者さんの顔を見る度に、辛い気持ちになる。
25年以上も切ってきた外科医には、知らないうちに重いモノが堆積している。
そういった意味では、ブラックジャックに近づいているのかもしれない。